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院長コラム 2020年6月

久しぶりにコイル詰めてきました

また当直に行った際に血管内治療を行ってきました。


でも、本文に入る前にまずは、前回の超高齢者の血栓回収術のその後の経過から。

なんと、入院から9日目で退院していました。
ビックリです。


脳の主要血管の閉塞で来院した患者様が、9日で退院するなんて。。。
ありえないような話しです。

元々麻痺はありませんでしたが、その後も麻痺の出現はなく、来院時の失語症は消失しており、カルテ記載を見るとスタッフと談笑している様子が書かれていました。

経過観察のMRIでは少し脳梗塞は出ていましたが、かなり限局的な梗塞巣しか出ていなかった様です。

超高齢者だったのでするかどうかは迷いましたが、やって良かったと思いました。




それでは今回の話です。。。 就寝中に前頭部痛の出現で目が覚めたというお婆ちゃんが救急車で来院しました。

意識状態はそれほど悪くはなく、特に嘔吐はなかったのですが、とにかく頭痛を訴えていました。
血圧もかなり高めでしたので、血圧上昇による頭痛の可能性も考えて、まずは点滴をしながら、降圧剤と痛み止めの注射をしてからMRI検査を始めました。

しばらくすると、看護師さんから電話で、

「ザー(SAH-くも膜下出血の事)でした。」

という連絡が来ました。

その画像です。



嘔吐はしていなかったので、余り強くは疑って居なかったのですが、かなり頭痛の訴えが強かったので可能性はある疾患です。

形や大きさからは開頭での手術でも、血管内手術でも出来そうに思いましたが、当直だけの為に行って居る私が治療方針や治療計画を立てる訳にもいきませんので、常勤医と相談して、血管内治療によるコイル塞栓術を施行する事になりました。

やや入口は広めではありますが、奥が深く、形がいびつです。
通常は先端に近い所(左の写真で矢印の先あたり)が破れていることが多いので、この部分に造影剤が入ら無くなれば、再出血は防げます。

合計4本のコイルを使って塞栓術を行いました。


破裂部位と思われる先端部分には造影剤が入って行かない(血液が入っていない)ようになっています。

入口付近は残っていますが、当面の再出血を防ぐという意味ではこれで成功です。
残っている部分に関しては、今後そのままで経過を見ていくという選択肢もありますし、問題となる様であれば再手術でコイルを追加するという選択肢もあります。


手術は全身麻酔で行って居ますが、術後の麻酔の醒めもよく、特に麻痺などの出現も認めませんでした。


破れる前(未破裂)の動脈瘤の場合は、コイルが上手く入れば終わりなのですが、くも膜下出血の場合、治療はこれで終了ではありません。

くも膜下出血患者様が元気に退院する為には、3つのヤマを越えなくてはいけません。

  1. 再出血(再破裂)
  2. 血管攣縮
  3. 正常圧水頭症

1.再出血(再破裂)

この患者様は既に超えていますが、これが一番怖いです。

最初の出血でも3割くらいの方が致命的となるのですが、再出血を繰り返す度に致死率が上がっていきます。
一番大きなヤマであり、再出血なく、手術まで持っていくという事がとても重要だと言えます。

手術中に再出血をする事もありますので、手術が終わった段階でヤマを越えたと言って良いと思います。

2.血管攣縮

出血した血から出た物質によって動脈が収縮する現象を言います。
出血後4日目くらいから起こり、2週間程度まで続きます。

程度は人それぞれですが、重度になると脳梗塞を起こす事があります。
致命的となる事は少ないですが、言語障害や運動麻痺が出たりしますので、経過が悪くなります。

3.正常圧水頭症

血液によって、脳の周りを回っている脳脊髄液の吸収が悪くなり、脳脊髄液がたまり気味になる事があります。
歩行障害や認知機能障害、尿失禁と言った症状が出ます。

起こった場合は、脳に溜まった脳脊髄液をお腹などに流す管を入れる手術が必要になります。


この3つのヤマを越えると元気に自宅退院となります。
今回の患者様も、無事自宅に帰れると良いなと思います。

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